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CAGE
今日は予定があったんですが、事情があって家でごろごろ
昔書いた詩や物語を読み返してみたり。。

最近、意図せず反響の会った詩というか物語と言うかを
再びUPして見ます。

  ☆  ☆  ☆  ☆

     『Cage』
  
 暖かい木曜日の昼下がり
この部屋には一人の女の子が住んでいる
女の子と一羽の鳥が
少し開いている窓から涼しい風が吹いてきて
籠の中の鳥は気持ち良さそうに目を閉じている

「コツンコツン…」
夜になって女の子の足音が廊下に響くと
鳥は嬉しそうに羽をバタバタさせる
ドアが開いて女の子が入ってくる
「おいで」
女の子が優しく鳥を呼ぶ
鳥は籠から飛び出して
女の子の肩にとまって、とっても幸せそうに、
「ピーピー」と鳴きながら女の子の顔に頬ずりをする
そうしたら女の子が人差し指で鳥の小さい頭をそっと撫でる

こんな日が、そう鳥が女の子に出会った日から
女の子が鳥と出会った日から続いている

そんなある日のやっぱり昼下がり
鳥はいつもの様に少し開いている窓から綺麗な空を見ていた
空を見ていて鳥はフト考えた
「どおしていつも窓を閉めて行かないんだろう」
いつも風を運んでくれる窓
「きっと、気持ち良い風を入れてくれる為に空けてくれてるんだ」
鳥はその気持ちの良い風に目をつむって
少し寂しくなった
「なんで籠の扉は開いてるんだろう・・・」
いつも開いている扉
「きっと、いつ帰ってきてもすぐに飛んで行ける様に空けてくれてるんだ」

そんな事を考えていたら、またいつものように
「コツン、コツン」
女の子が帰ってくる音が聞こえて
また鳥は嬉しそうに羽をバタバタさせた
女の子は帰ってくるといつものように
嬉しそうな声で
「おいで」
と言う
鳥はホッとして女の子の肩に飛んで行った

次の日、やっぱり窓は開いているし、籠の扉も開いている
でも鳥はもうそんな事どうでも良かった
少し
「どこへ行っても悲しまないのかな
もし空に飛んでいきたくなったら
飛んでいけば良いって思われてるのかな」って考えたけど
鳥はそこに、女の子の部屋に、いや
女の子と一緒に居たかったから
例え窓が開いていても、籠の扉が開いていても
鳥は籠の中で女の子を待っていた

ある日、女の子の帰りがとっても遅かった
鳥は凄く心配になって、何度も女の子を探しに行こうかと思った
だけどもし女の子が帰ってきたときに鳥がいなかったら
女の子が悲しむだろうと思って
鳥はじっと籠の中で待っていた
遅くになって女の子は帰ってきた
いつもと変わらない様子で、優しく
「おいで」
と言った
鳥はやっぱり幸せそうに、女の子に頬ずりをした

次の日も、その次の日も
女の子は帰りが遅かった

鳥はやっぱり心配になって
何度も外に出ようとした
でもやっぱり女の子が帰ってきたときにいなかったら
女の子が悲しむだろうと思って

そしてその日、女の子は帰ってこなかった
鳥はいつ帰って来ても良いように、ずっと起きて待っていた
けれど気付くと寝てしまっていたらしい

朝の光がまぶしい

目を開けた鳥は、ベッドで寝ている女の子を見つけた
女の子の近くにいって
「ピッピッピ」
鳴いてみた
女の子は気付かなかった
鳥は女の子の服にとっても綺麗な一枚の羽が付いているのを見つけた

その日もやっぱり女の子は帰ってこなかった
鳥は初めて窓辺にとまり、空を見つめていた

 ほんの一瞬部屋の中を見渡した後
鳥は窓から飛んでいった

部屋には一人の女の子が住んでいる
女の子と一羽の綺麗な羽の鳥が
少し開いている窓から涼しい風が吹いてきて
籠の中の綺麗な鳥は気持ち良さそうに目を閉じている

「コツンコツン…」
夜になって女の子の足音が廊下に響くと
鳥は綺麗な羽をバタバタさせる
ドアが開いて女の子が入ってくる
女の子は急いで籠の扉を開けると 鳥の綺麗な羽を手のひらで優しく撫でる
次の日も、その次の日も

ある日女の子は籠の扉を開けたまま出て行った
帰ってきた女の子は急いで鳥かごに走り寄った

そして部屋中を見渡し 悲しそうにベッドにふせた
ベッドで伏せている女の子を 窓の外の木の上から
一羽の鳥が見ていた 

女の子は部屋に残った一枚の綺麗な羽を見つめて泣いていた
鳥はそれをじっと見つめていた

その日女の子は綺麗な一枚の羽を窓の外にかざすと
風に任せてすっと手を離した
綺麗な羽は ひらひら飛ぶことなく すーっと落ちていった
そして机の引き出しから 小さな箱を取り出した
女の子が箱を開けると そこには沢山の羽が入っていた
女の子はその羽を抱きしめると ベッドで泣いた

それからどのくらい経ったろう 3日?いや3年?
その部屋からは 楽しそうな笑い声は聞こえてこなかった
聞こえてくるのはベッドで羽を抱きしめて泣いている女の子の声だけだった

その声を窓の外の木の上から一羽の鳥が寂しそうに聞いていた

すると少し開いていた窓から風が吹いて沢山の羽が部屋に舞った
女の子は焦って その羽を全部拾おうとしたけど 風に舞って上手く拾えない
女の子は 窓に手をかけた
手に力を入れて窓を閉めようとしたその時
木の上にいる鳥を見つけた

女の子は窓を閉められなかった 嬉しそうにでも悲しそうに
鳥を見つめた
窓から沢山羽が風に乗ってどんどん飛んでいく
女の子はそれでも窓を閉めなかった

そして不安が一杯詰まったような声で言った
「おいで、帰って・・・きて」
涙を流しならが 木の上の鳥に手を伸ばした

鳥はずっと閉じていた羽をゆっくり動かして
羽ばたけるかどうか確かめると 女の子の差し出した手に飛んでいった
鳥が女の子の手にとまると 女の子はゆっくり窓を閉めた

それまで沢山在った羽はもうだいぶ少なくなってしまった
でも女の子は鳥を抱きしめた
鳥はしばらく黙ったままだったが
小さく「ピッピ」と鳴くと 女の子に優しく頬ずりをした

暖かい水曜日の昼下がり
この部屋には一人の女の子が住んでいる
女の子と一羽の鳥が
少し開いている窓から涼しい風が吹いてきて
籠の中の鳥は気持ち良さそうに目を閉じている

「コツンコツン…」
夜になって女の子の足音が廊下に響くと
鳥は嬉しそうに羽をバタバタさせる
ドアが開いて女の子が入ってくる

女の子は窓を閉めると ゆっくり籠の扉を開けた

鳥はとても嬉しそうに女の子の手にのった

この部屋には今までと変わらない時間が流れている

変わったのは

閉まっている籠の扉

窓から飛んでいった沢山の羽とわずかに残った羽

風は今日も鳥と女の子に優しく吹いている

  ☆  ☆  ☆  ☆

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by sameal | 2007-03-04 23:51 | Poetry
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『誰かの為に・・・』 幸せの共有を探し続ける日々の日記です。広告を通して人と人が繋がってゆく、そんな素敵を作ってゆきたいです

by sameal
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